国産広葉樹について
ウメバチファーニチャーでは、国産の広葉樹を積極的に使っています。
現在主に取り扱っている材木のそれぞれの特徴や、国産にこだわるわけについてまとめました。
目次
1 材木の特徴
材木の特徴
オニグルミ(鬼胡桃) クルミ科クルミ属
硬い殻のイメージが強いクルミですが、材木は硬すぎず、十分な強度と粘りがあります。
木目は穏やかで、和、洋、どちらの雰囲気にもよく合います。
紫色がかすかに混じった独特の色味です。
アメリカ東部で産出されるブラックウォールナットの近縁種。
比重:0.53
生育中に受けたキズなどにより、黒い筋が生ずることがあります。
キハダ(黄檗、黄蘗) ミカン科キハダ属
樹皮を乾燥させたものをオウバクといい、古来より生薬として利用されてきました。
材は美しい木目で、やや緑を帯びた落ち着いた色合いです。
繊細な和の空間と相性がいいです。
広葉樹の中では、やや軽い部類に入りますが適度な堅さがあります。
比重:0.48
キリ(桐) キリ科キリ属
日本でとれる木材の中で最も軽い。広葉樹は重いのが一般的ですが、キリは例外です。色合いはアイボリー。
軽いこともさることながら、乾燥による収縮が少ないことから、古くから密閉性の高い桐箪笥の材料として使われてきました。
当工房では、主に引出の内部材として利用しています。
桐というと日本のイメージがあるかもしれませんが、昭和50年頃からは安価で安定した供給量を誇る輸入材が国内桐市場を席巻しています。
国産材は手に入りにくくなっています。
ご希望に応じて国産の会津桐か輸入材をお選びいただけます。
比重:0.19~0.40
クリ(栗) ブナ科クリ属
力強い木目をもちながら、シャープな印象の家具に使うと、落ち着いた雰囲気に仕上がります。
製作直後は明るい色合いですが、時間の経過と共に、色が濃く変化していきます。
タンニン成分が多いことから、鉄媒染液で黒く染めたり、石灰水で色を濃く変化させることができます。
色々な可能性を感じる木です。
比重:0.60
葉節という小さな節が入ることがあります。
小さな枝が幹に包み込まれてできたものです。
ケンポナシ(玄圃梨) クロウメモドキ科ケンポナシ属
なんとも不思議な響きの名前です。
果柄が肉質で、梨に味と香りが似ていることから名前に梨とつきます。
美しい木目を持ち、光沢のある仕上がりになります。
心材は橙色で、暖かい印象の家具になります。
比重:0.64
シウリザクラ、シュリザクラ(朱里桜、朱理桜) バラ科ウワミズザクラ属
国産の広葉樹の中でも特に色が濃く、やや赤みがかった色合いは高級感があります。
木目は淡く、材質は緻密で、程よい硬さがあります。
オイルで仕上げるととても肌触りが良いです。
アメリカ東部で産出されるブラックチェリーの近縁種。
比重:0.67
樹脂が溜まった、ガムポケットという黒い点や筋が見られることがあります。
ヤチダモ、タモ(谷地梻、梻、櫤) モクセイ科トネリコ属
木目はクリと似ていて、よく見ないと間違うこともあります。
はっきりとした木目ですが、ナチュラルな色味で比較的素直な印象です。
時に、杢と呼ばれる独特の木目が出ることがあります。こいったものは、指物の世界では好んで使われます。
十分な硬さ、粘りがあり、特に強度が必要とされる箇所に使用しています。
アメリカ中東部で産出されるホワイトアッシュの近縁種。
比重:0.43~0.74
ホオノキ(朴の木) モクレン科モクレン属
古くから日本刀の鞘(さや)に使われてきた木材で、刃物との相性は抜群です。
刃物を傷めず、適度な強度があります。
均質で水に強く、最高級のまな板材料として使われてきました。
狂いが少ないのも特徴です。
刃のあたりの良さから、まな板やカッティングボードに使用しています。
また、木目が緻密で彫刻用材にも使います。
比重:0.40~0.61
ヤマザクラ(山桜) バラ科サクラ属
淡い黄褐色で、肌触りが良く、使い込むと色が濃く変化していきます。
よく見ると、黄緑やピンク色が入り交じり、様々な表情を見せます。
材質は緻密で硬く、かけにくいです。浮世絵の版木にはヤマザクラと決まっています。
カトラリーの材料としても重宝しています。
比重:0.62
ピスフレックという斑点がよく現れます。生育中に虫に食べられた部分を治癒するために出来た組織です。(写真矢印)
それぞれの木の経年変化についてはこちら
国産広葉樹を使うわけ
国産広葉樹は一部の大径木のものを除いて、「雑木(ざつぼく)」とされ、あまり価値のないものとされてきました。 均質なものを大量にスムーズに手に入れることが難しく、大量生産のメーカーからは敬遠されています。 メーカーでは、安定した供給が可能な外国産広葉樹が多く使われています。 国産広葉樹は、家具用材としてあまり使われず、多くがパルプ原料になってしまう現状があります。 効率を考えると、やはり外国産広葉樹が家具用材として選ばれてしまいます。 国産でも外国産に負けない美しい木目を持っているのにも関わらず。 一方で、日本の山間地では、多くの種類の広葉樹を実用的に利用してきた長い歴史があります。森に人の手が適切に加わることで、生物多様性のある豊かな森が維持されてきたのです。 森には様々な種類の樹木があり、自然本来の多様性があります。この多様な樹木を適切に利用することは、持続可能な木材利用であると考えています。 安定供給の難しい、国産広葉樹を使うことは、ウメバチファーニチャーのような受注生産の工房だからできることです。 均質な材木が大量になくても、人の目で木目を確認し、適材適所に使うことができます。 多彩な国産広葉樹を使うことに意義と魅力を感じながら製作しています。 国産材を使うことで、以下のようなメリットも生まれます。 ■日本の森、地方を助けることにつながります。 かつては国有林の伐採などの問題があり、木を伐ることは悪いこと、というイメージがありました。しかし現在では、適切に木を伐ることは、森林を若返らせ健全な森を維持していくのに必要なこと、という考えが浸透してきています。 また、地方の森林所有者の経営にも貢献できます。広葉樹を単価の低いチップ原料としてではなく、用材として付加価値を上げて利用することが望まれています。木材が持続可能な素材として、安定的に供給できるようにするため、よい循環を作っていく必要があります。 ■地球温暖化の防止につながります。 ウッドマイルズという言葉を聞いたことがあるでしょうか? フードマイレージの概念を木材に当てはめた言葉です。 生産地と消費地が近ければ、輸送に使うエネルギーを少なくすることができ、二酸化炭素の排出を減らすことができます。 海外から輸入された木材を使うことは、大量の輸送エネルギーを消費していることになります。 食料も木材も地産地消することで、地球環境への負荷を減らすことが出来るのです。 ■違法に伐採された木材を使うのを避けることが出来ます。 世界では、無秩序に木が伐採され、木材が輸出されている現状があります。 輸入した木材にはこういった木材が含まれている可能性がゼロとは言えません。 木の成長スピードを上回らない量で伐採される国産の木材を使うことで、世界の森林を保全することにつながります。 国産広葉樹の魅力を多くの方に知って頂けるような家具を作っていきたいと考えています。